固形物を含む液体移送の課題challenges in solid matter containing liquid transfer
製造現場において、異物や固形物を含む液体の移送が求められる工程は珍しくありません。特に食品工場では、ジャムやドレッシング、お菓子の原料など、ナッツ・ごま・果肉(の種)といった固形物を含む製品が数多くあり、その製造工程では「ポンプの詰まり」「移送中の固形物の破砕」といった課題に直面します。
本記事では、これらの課題を解決するためのポンプ技術と、実際の導入事例をご紹介いたします。
課題が生じる背景background to challenges
固形物が含まれる液体を移送するにあたり、以下のような問題が生じるケースが多く見られます。
- 詰まりやすい:ごまや果実の種など硬くて小さい固形物がポンプの可動部(インペラやローターなど)に引っかかることで動作不良を起こし、ポンプの緊急停止につながる
- 破砕による品質低下:果肉やナッツなど原型を保ちたい材料がポンプ内で潰れてしまい、最終製品の見た目や食感などの品質が低下する
- 洗浄性:小さい固形物が含まれる食品は、ポンプでの移送後に固形物が内部に滞留しやすいため、衛生面から使用後には丁寧な洗浄が求められる
このような事情から、固形物入りの液体を扱う際には、それに適したポンプの導入が必要とされます。
どのように課題を解決するのかHow to solve challenges
二軸スクリューポンプ
二軸スクリューポンプは、2本のスクリューによって作り出される空間が連続的に前に押し出される移送原理をしています。これにより、液中に含まれるごまやナッツ、果肉など固形物の破損を抑制しながら移送することができます。
また、移送する液に含まれる固形物のサイズにあわせてポンプの仕様を微調整することにより、イチゴの種のような硬くて小さい固形物が含まれる液でも、2本のスクリューの間などでの固形物の詰まりの発生を抑えることができます。
分解洗浄も簡単な構造であることに加え、CIP洗浄にも対応しているため、サニタリー性も高く衛生的に使用することができます。
導入事例Case study
ジャム
従来のポンプでは液の移送時に中に含まれる果物の種が詰まってしまうことが度々あり、そのたびに復旧に時間が取られてしまっていました。
また、使用後に分解洗浄を行っていましたが、再組立する際にちょっとした調整のズレで動作不良を起こしてしまう可能性があるので、常に注意しながら行う必要がありました。
ここに二軸スクリューポンプを導入することで、種の詰まりにより緊急停止が発生しなくなり、また洗浄する際には普段はCIP洗浄で対応できるようになり、分解洗浄が必要な場合でも簡単に作業を行えるようになりました。
液卵
割卵機から供給される液卵をポンプで次工程で使用するタンクに移送する工程で、従来のポンプでは液卵に混入してくる卵の殻が噛み込んでしまったり、移送中に加わるせん断によって最終製品の品質低下が発生することがあるという課題があった。
また、使用後はCIP洗浄を行っていたが、このためにブースターポンプを別途用意する必要があった。
ここに二軸スクリューポンプを導入することで、卵の殻が混入してきてもポンプ内で噛み込ませることなく移送できるようになり、移送中のせん断も抑制できたため最終製品の品質維持にもつながった。
また、回転速度を速くすることによりブースターポンプなしでもCIP洗浄を完結させられるようになった。
まとめSummary
固形物を含む液体製品の移送では、「壊さない・詰まらない・汚れにくい」ポンプの選定が求められています。
これからの製造ラインでは、単なる移送機器としてではなく、「品質保持と効率化を両立する設備」としてのポンプ選びが必要になると言えるでしょう。
固形物を含む液体搬送に適したポンプは、製品品質の維持、ラインの安定稼働、衛生性の確保といった観点で製造現場の強い味方となります。課題に応じたポンプ選定が製品開発と生産性の鍵を握っています。
ご紹介した製品Recommendation

二軸スクリューポンプSQ型
液に含まれる固形物を壊さず移送