なぜ「自吸力」が重要なのか ~食品・化学業界の現場課題から見る
Why self-priming power is required?
ドラム缶や一斗缶、ローリー車から液体を別のタンクにポンプを使って移し替える工程は、食品、化学、化粧品、塗料などさまざまな製造現場で日常的に発生します。
しかし、その現場には以下のような悩みがあります。
- 容器の底の残液が多く、廃棄ロスや人手での残液回収の手間につながる
- 粘性の高い液体を吸い上げるのに苦労している
- ドラム缶を切り替える度に呼び水が必要で、作業時間が増える
これらの問題の背景としてよくあるのが、ポンプの自吸力の弱さです。特にドラム缶のような大きな容器に入れられた液体を吸い上げる際には、回収の手間や廃棄ロスをなくすためにも残液を最小限にすることが求められます。
自吸式ポンプの基本原理と種類Principle and types of self-priming pump
自吸式ポンプとは、毎回の呼び水なしで自力で液体を吸い上げ始めることができるポンプのことを指します。液体の供給源(例:ドラム缶、地下ピット など)より高い位置にポンプを設置している場合でも、大気圧とポンプ内部の圧力の差によって液体を吸い込む構造となっています。
自吸式のポンプの代表例として、以下のようなものがあります。
ベーンポンプ | 接触式のポンプであり、高い自吸力を持つ。運転音が静か。 耐久性が高く、メンテナンスが容易。 |
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ダイヤフラムポンプ | 強い自吸力があり、数千~1万mPa・sの粘性液に対応できるものが一般的。 定量性に優れる一方、脈動が出やすい。 |
ギヤポンプ | 高粘度液を安定的に移送することを得意とする。 導入費用は安価だが、歯車が同士が常に噛み合う構造のため比較的摩耗が早い。 |
チューブポンプ | 空運転可能で、高粘度液にも対応。導入費用は安価だが、 チューブを押しつぶしながら使用するため頻繁にチューブの交換を求められることが多い。 |
ねじポンプ | タイプによって1軸、2軸、3軸のものが存在。極めて粘度の高い液体にも対応できるが、初期導入費用は比較的高い。 |
一口に自吸式のポンプといっても、それぞれ異なる特徴があります。このため、用途や導入条件にあわせて適切なポンプを選定する必要があります。
高い自吸力を誇るラジアルベーンポンプとは?How radial vane pump works
ラジアルベーンポンプは、内部にベーンと呼ばれる羽根を備えた容積式ポンプのことを指します。すなわち、複数枚のベーンがポンプの内壁に沿って回転することで間仕切られた空間の容積変化を引き起こし、この作用によって液を吸い込んだり吐き出したりということを実現させています。
ラジアルベーンポンプの主な特徴として以下のようなものが挙げられます。
- 運転音が静かで騒音が少ない
- 比較的脈動が少ない
- メンテナンスが容易
- 対応できる粘度幅が広い
- 多少のスラリーが含まれる液の移送にも対応可能
例えば、伏虎金属工業のラジアルベーンポンプでは、水はもちろん、粘度が数万mPa・sの液体も取り扱うことができます。また、適切なメンテナンスを行うことで長く使用ができるため、中にはポンプ本体を10年以上に渡ってご使用いただいているお客様もいらっしゃいます。
なぜラジアルベーンポンプがドラム缶からの液回収に適しているのか
Why radial vane pump is suitable for collection from drum can
ラジアルベーンポンプがドラム缶からの回収に適している理由として、以下のようなものが挙げられます。
- 高い自吸力➝毎回の呼び水なしでドラム缶の底まで液を回収できるため、作業時間や負担を短縮
- 対応できる液の幅が広い➝低粘度から高粘度、高温の液体の液体まで取り扱いが可能
- ランニングコストの削減➝メンテナンスの負担が少なく、多少のスラリーが含まれる液体にも対応
- 作業環境の向上➝運転音が静かで現場で発生する音の課題を解消
ラジアルベーンポンプの導入事例Case study
まとめSummary
ドラム缶の底に残った液に対し、人手を投じて回収作業したり、多少のロスは仕方ないと諦めていたりということがあるかもしれません。しかし、ポンプの選定を見直すことにより大きな改善が期待できます。
毎回の呼び水が不要、運転音が静かという効果は現場の作業環境や生産性を向上させるポイントとなります。
ドラム缶やタンクからの吸引で課題がある方は、ぜひ一度ラジアルベーンポンプの導入を検討してみてください。
ご紹介した製品Recommendation

ラジアルベーンポンプ
強い自吸力でドラム缶の底の底まで液を回収