エポキシ樹脂の硬化時に気泡が入り込むことは、外観不良だけの問題ではなく、強度の低下や絶縁不良などといった製品の最終的な性能にまで影響してくる可能性があります。
「塗工前に脱泡処理を行っているのに、なぜか気泡がなくならない」と頭を悩ませる現場もあることかと思います。その原因は事前の脱泡工程ではなく、ポンプによる「移送工程」に潜んでいるかもしれません。本記事では、気泡が発生する原因からその防ぎ方までを解説いたします。
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エポキシ樹脂の気泡で起きる問題
エポキシ樹脂といっても様々な種類のものがありますが、特に高粘度のものはその流動性の低さから、抱き込んだ気泡が抜けにくくなります。この気泡は、単にピンホールやクレーターといった外観不良ということにとどまらず、製品の性能に大きな影響を引き起こしかねません。
例えば、内部に空洞が残ることで、機械的な強度の低下や、電子部品における絶縁不良の原因へとつながることがあります。さらに、気泡を含んだ樹脂は空気の分だけ樹脂の体積が変化するため、充填・吐出工程での定量性が低下し、量産時の品質のばらつきを招くといった影響も発生してきます。
たかがちょっとした気泡だと感じるかもしれませんが、これを放置することによって不良品の廃棄コストや、検査・手直し工数の増加という結果を呼び、生産全体に悪影響を及ぼすことになるかもしれません。
エポキシ樹脂に気泡が入る原因とは?
撹拌時の空気巻き込み
エポキシ樹脂に気泡が混入する典型例は「撹拌工程」で見られます。これは、主剤と硬化剤を混ぜ合わせるタイプの二液混合型では、液同士を均一にしっかり混ぜようとする際に気泡が入り込んでしまうためです。
よく混ぜようとして撹拌時に液面が激しく波立つようなことがあったり、不適切な形状の撹拌翼で高速回転させたりすると、乱流が生じて空気を大量に巻き込むことになります。粘度の低いものでは静置している中で自然と抜けていくこともありますが、高粘度のものでは入り込んだ泡は簡単には抜けていきません。
混ぜる工程を行うと気泡を含んだまま次の工程へ流れてしまうため、大がかりな脱泡工程を前提に生産ラインを構築している状況は珍しくないのではないでしょうか。
材料の高粘度による脱泡不良
液体の粘度が高くなるほど、混入した気泡が浮上して液面から離脱する際の抵抗が大きくなります。上述のように、低粘度の液体ならすぐに抜ける気泡でも、高粘度のエポキシ樹脂の中では浮上できず、内部に閉じ込められたまま滞留してしまうのはこのためです。
加えて、硬化型の樹脂では時間が経つにつれて硬化が進み、より高粘度化してきます。このため、撹拌してからあまり間を開けずに気泡を除去してしまうことが好ましくなります。また、脱泡不良を懸念する際には温度条件にも注意が必要です。一般に樹脂は温度が下がると粘度が大きく上がってしまうため、冬場や低温環境ではさらに条件が厳しくなってしまいます。
移送工程での再混入
懸命に脱泡処理を行っても、最終的な充填時に気泡が出てしまう。そんな場合には移送工程で気泡が再混入しているかもしれません。
脱泡してきれいになった樹脂でも、移送ポンプに液を供給する際に空気を巻き込んだり、配管内の乱流やキャビテーションによって新たな気泡が発生することがあります。こういったことはタンク内の液残量が少なくなった際には特に注意が必要です。一度巻き込まれた空気は配管内でさらに細かく砕かれ、より抜けにくい微細な気泡になる傾向があります。
現場で脱泡工程をいくら強化しても改善しない「原因不明の気泡の噛み込み」が発生している場合、移送ラインがボトルネックになっているケースが多々あります。「脱泡だけでは不十分」であり、気泡を生まない移送方法への見直しも注意すべきポイントです。
エポキシ樹脂の気泡を脱泡する方法
真空脱泡
真空脱泡は、様々な液体の気泡除去の手段として一般的に用いられる方法です。密閉容器内を減圧することで、樹脂に閉じ込められた気泡を強制的に膨張させ、浮上・破裂させて除去します。微細な気泡まで引き抜ける高い脱泡効果が最大のメリットです。
一方で、運用上の課題も少なくありません。減圧時に樹脂が急激に発泡して容器からこぼれる可能性があるためにタンク内の液量を少なめに制御する必要が生じかねないほか、処理がバッチ式(一括処理)になるため、脱泡に数十分から数時間かかるケースもあります。量産ラインでは待ち時間が発生して生産性のボトルネックになりやすく、極めて粘度が高い樹脂では完全に気泡を抜ききれない状況も出てきます。
遠心脱泡
遠心脱泡は、容器を高速で回転させるときに発生する遠心力を利用して、液体よりも軽い気泡を中心部へ強制的に押し出す仕組みのものです。真空脱泡では抜けにくい微細気泡に対しても、短い時間で脱泡効果を発揮します。粘度があまり高くない液体に対しては特に有効な手段となります。
一方で、高粘度液では単に高速回転させるだけでは不十分であり、真空引きしながら遠心力をかける、自転・公転式のものを使用して流動性をかせぐといった工夫を行う必要が出てきます。また、その原理上一度に処理できる量が容器のサイズに依存しており連続処理が難しいため、大量生産にはあまり向いていません。ラボスケールや少量生産用途で重宝されています。
加圧脱泡
加圧脱泡は、気泡を外に抜くのではなく、圧力をかけることで気泡を目に見えないサイズまで縮小させたり、樹脂の中に強引に溶け込ませて消す発想を用いた手法です。フィルムを張り合わせる用途や、電子基盤を樹脂で覆う際(ポッティング)の処理などに用いられます。
この手法は真空脱泡のように減圧による樹脂の吹きこぼれリスクがないのが大きな特徴です。一方で、気泡そのものを完全に外へ排出するわけではないため、圧力を維持したまま樹脂を硬化させる必要があります。そのため大量生産や連続的な処理にはあまり向いておりません。
加熱による脱泡促進
樹脂を湯煎やヒーターで加温し、温度を上げることによって粘度を下げて気泡を抜けやすくする補助的な手法です。粘度が低下することで液体内部に閉じ込められていた気泡の移動のための抵抗が小さくなり、泡が浮上しやすくなります。
上述の通り補助的なものなので、基本的には単独ではなく、真空脱泡などの手法と併用して脱泡効率を上げるために用いられます。導入しやすい反面、温度管理の手間は増加します。温度を上げすぎると樹脂の硬化反応が予想よりも早く進んでしまうリスクがあるため、材料や季節、現場環境に応じた調整を考える必要があります。
【見落とされがちな課題】脱泡後も気泡は再混入する
時間とコストをかけて脱泡処理を行っても、なぜか充填や塗工のタイミングでまた気泡が出てしまうというケースが見られることもあります。この原因として見落とされがちなのが、「移送工程での気泡の再混入」です。
脱泡直後のタンク内では泡のない綺麗な状態になっていても、タンクから液を吸い込む際の液面の変動や、液残量が少なくなった時の空気の巻き込みによって、樹脂中に気泡が入り込んでしまうことがあります。さらに、配管内での乱流や移送時の圧力変化によってキャビテーションが発生すると、液中で再び気泡が生まれ、配管内で微細化されて除去が難しい状態へと悪化します。
工程ごとに担当が分断されている現場では、「脱泡は完璧にやったはず」と思い込み、移送時の気泡の抱き込みは「原因不明の不良」と捉えられてしまいます。脱泡設備だけを強化しても、移送ラインで悪影響が出ている場合には全体最適にはなりません。タンク内で脱泡するだけでは不十分であり、気泡を生まない・巻き込まない移送工程への見直しも求められることになります。
脱泡しながら移送するということが重要
「脱泡してから移送する」という工程は、脱泡の段階で完全に気泡を除去しても、別工程へ液を送る際のポンプ駆動等で再び気泡が混入するリスクがどうしても発生してしまいます。この課題を解決するには、配管やタンク内の液面の制御といった方法の他に、送りながら空気を抜く、つまり「脱泡と移送を一体化する」という方法を取ることができます。
より理想的には、移送ラインの中で連続的に脱泡処理を行うことができれば、気泡の再混入ルートそのものを断つことができます。これが達成できれば充填時や塗工時の気泡不良が大きく減少し、品質のばらつきを改善することができます。また、バッチ式の脱泡設備で発生していた「待ち時間」が解消され、連続生産が可能になるのも大きなメリットです。
微細な気泡の混入のために連続的な脱泡では対応しきれないケースでも、移送しながら空気を取り除く機構を導入することで、タンクから次の工程に移送する際の空気の混入を防ぐ効果が得られます。工程を切り離して見るのではなく、全体で最適化するアプローチを取ることでトラブルの回避につなげることができます。
伏虎金属工業の脱泡ポンプ
脱泡機能付き二軸スクリューポンプ
エポキシ樹脂の気泡問題に対する解決策としておすすめしたいのが、脱泡機能付き二軸スクリューポンプ(VQ型)です。
このポンプ最大の特徴は、脱泡と移送を同時に行う独自の機能にあります。高粘度なエポキシ樹脂でも、連続的に気泡を除去しながら安定して送液できるため、移送工程でのエア再混入リスクを大きく減らすことができます。
また、連続的なインライン脱泡にまで対応できれば、バッチ処理で発生していた待ち時間をなくし、品質の安定化と生産性の向上を同時に達成するための手段となります。
導入事例
エポキシ樹脂の移送事例
ドラム缶で仕入れたエポキシ樹脂(約100,000mPa・s)を塗工する工程で、液の中に含まれている気泡や、ドラム缶の底の方の液を引き抜く際に巻き込んだ気泡の影響で、塗工機のノズルから吐出する際に液が途切れてしまい製品不良につながるという課題がありました。
そこで、ドラム缶から取り出した樹脂を塗工機に移送する用途で脱泡機能付き二軸スクリューポンプを導入。樹脂が抱き込んでいた大きな気泡を取り除きながら移送することができるため、塗工機のノズルから液が途切れることがなくなりました。
まとめ
エポキシ樹脂への気泡の混入は、見た目だけではなく強度や絶縁性といった製品の品質を低下させる要因となります。現場では真空脱泡など様々な対策が行われていますが、「脱泡したのに気泡が残る」場合、移送工程でエアが再混入している可能性が考えられます。
これを解決するために、従来の「脱泡してから送る」という工程に対し、脱泡機能付き二軸スクリューポンプという選択肢により脱泡と移送を一体化させるという対策をとることができます。気泡を含ませない連続処理へ移行することで、品質のばらつきがなくなり、生産性の大幅な向上につながります。
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