ポンプの「エア噛み(エアロック)」による吸入や吐出不良。これは対処方法や原理を知っていれば対応は難しくないのですが、知らないと「色々と改善のための手段を尽くしているはずなのに全然良くならない…」といったことになってしまう厄介者です。
本記事では、エアロックが発生する原因や影響、および日々の運用改善から、配管設計に至るまでの具体的な解決策を解説します。
エア噛み(エアロック)とは何か?
ポンプの「エア噛み」とは、吸込配管などから流体中に空気が混入する現象です。この空気がポンプヘッド内や配管の高所に滞留し、膨張や圧縮することで通常とは異なる圧力変化を生み出したり、液体の流れを遮断することで吸入や吐出の不良につながることを「エアロック」と呼びます。
特に一般的な遠心ポンプは空気を押し出すのが苦手な事が多く、空気が入り込むとポンプの中にとどまってしまい、そのまま運転し続けると最悪の場合は配管やポンプが破損につながる可能性があります。また、容積式ポンプでは、移送原理の特徴からダイヤフラムポンプで比較的エアロックが発生しやすくなります。
症状は、現場では
「吐出量不足」
「圧力計の振れ」
「特有の空転音」
などとして現れます。その影響からキャビテーションと混同されやすいですが、キャビテーションが「液体自身の蒸発とそれによる気泡崩壊」であるのに対し、エア噛みは「外部気体の侵入と滞留」という違いがあります。
これらは突発的な不具合ではなく、配管設計の見直しや用途に合わせたポンプ選定をすることで予防可能です。
エア噛み(エアロック)が与える影響
エア噛み(エアロック)による顕著な影響は流量不足ですが、他のところでも何かが起こっているかもしれません。
例えば、配管やポンプに空気が混入することで圧力脈動と振動が発生している場合、この負荷が連続的にかかり続けると、配管にの機械的なダメージが蓄積されて破損につながる可能性があります。
また、ひどい場合には「ドライ運転(空運転)」が誘発されることもあります。液膜で潤滑されているメカニカルシールなどの軸封部は、エア噛みによる潤滑不足で摩耗や回復不可能な液漏れを引き起こします。
その他、見えにくいところですが、モーターの負荷変動による電力消費の増大に加え、突発停止に伴うダウンタイム、高額な部品交換費用、頻繁なエア抜き作業による保全工数など、本来不要だったコストが発生することにもつながります。
エア噛みが起こってから対策するのではなく、エア噛みが起こらないような運用にすることで手間を大きく減らすことができます。
ポンプ内でエア噛み(エアロック)が発生する主な原因
吸込み配管からの空気侵入(シール不良や継手漏れ)
ポンプの吸込側配管は、運転中に大気圧より低い「負圧」になります。そのため、配管の継手やガスケット、ポンプ本体にわずかな隙間があると大気圧下にある外部の空気を吸い込むという現象が起きます。ねじ込み配管では特に発生しやすいため、きちんと締め切ることやシールを施すといった対策が必要になります。
また、吸い上げ条件となっている場合、逆流防止のためにフート弁を設置するケースもあるかと思いますが、これが正しく取り付けられていない場合もエア噛みの原因となります。
吸い上げ条件となる場合、経年劣化や締付不足、配管の熱膨張によるわずかな緩みがエア噛みへと発展します。運転中に圧力計の指針が小刻みに振れる場合は要注意です。
ポンプ本体の漏れについては、石鹸水を使って空気が漏れ出している箇所を確認するというやり方もあります。
配管レイアウト不良による空気溜まり(エアポケット形成)
配管の形状や勾配の設計もエア噛み発生原因となります。特に「逆U字(鳥居)配管」と言われる凸型の配管を行うと、周囲より高い部分に軽い空気が滞留してエアポケットを形成し、サイホン効果を阻害して液体の流れを妨げます。新設・据付直後から揚水できないトラブルの多くはこれが原因です。
また、水平配管がポンプに向かって「下り勾配」になっている場合も、曲がり角のところにエア溜まりができてしまいます。配管図面をチェックし、吸入配管はポンプに向かって「上り勾配」とするのが基本です。
流体特性による気体混入・気化現象
配管や操作に問題がなくても、流体そのものがエア噛みの原因になるケースがあります。例えば、液中に溶け込んでいたガスが放出される現象や、発泡性流体の移送時に生じた泡の影響が考えられます。
前者は液の温度変化が大きくなるときや揮発性の高い液を扱う際に発生することが考えられます。温度変化が大きい場合、液温が高いときには空気が溶けることができていたのに、液温が低くなると溶けきれなくなって外に出てきてしまった、というケースです。
また、発泡性流体の代表例としては次亜塩素酸ナトリウム水溶液が挙げられ、ダイヤフラムポンプを使った移送ではガスロックが起こりやすくなります。
流体温度やプロセス自体を変更できない場合は、気泡ごと移送できるような押し出す力の強いポンプやエア抜き機構をもったポンプを選定することででトラブルを解決することができます。
エア噛み(エアロック)の防止策
空気を滞留させないためのエア抜き
空気は配管内に侵入するものだという前提に立ち、それを確実に排出するためにエア抜き機構を設置することが好ましいです。負圧となる吸い込み側には使用できませんが、正圧となる吐出側においては、配管の最高所やポンプ上部など、空気が滞留しやすい箇所にエア抜き弁を設置することは効果的な対策となります。
手動弁は確実ですが人の手間がかかり、自動エア抜き弁は便利ですが、スラリーや高粘度液では内部が詰まり作動不良を起こすリスクがあります。流体特性に合わせて適切な機器を選定し、既存設備でも高所へ弁を後付けで取り付けることで、突発的なエア噛みの予防につながります。
配管レイアウトの最適化によるエアポケット防止
先述の通り、配管の一部が高くなる「鳥居配管」や、「下り配管」の導入は、エアポケットを生んでしまう典型的なNG例です。特に吸入側ではポンプに向かって1/100以上の上り勾配となるように設計することが好ましいです。
それ以外にも、仕切りバルブや異径管を使用する際には設置方法に工夫が必要です。仕切りバルブは構造上ハンドル部分に空気が溜まりやすくなります。設置の際にはハンドル部分を寝かせた状態にすることでリスクを下げることができます。
また、特に吸い込み側に異径管を使用する際には、同心のものではなく偏心のものを使用することでエア溜まりのリスクを減らすことができます。これは、同心のものを使用すると上部にエア溜まりができてしまうケースがあるためです。
エア噛み(エアロック)に強いポンプを選定する
エア噛み対策のひとつとして、「気体を巻き込みに強いポンプ」を選定することも候補に入ります。一般的な遠心ポンプは空気の混入に弱いですが、容積式ポンプの多くは吸い込み・吐き出し能力が高く、多少空気が混入しても問題なく使用できることが多いです。
ただし、配管に生じたエアポケットまでは解消できないため、やはりポンプだけではなく配管構成にも注意は必要です。
まとめ
ポンプのエア噛み(エアロック)は、流量の低下はもちろんのこと、放置すれば配管全体にまで影響が出る可能性のある現象です。発生してしまうと原因の特定は難しいですが、配管レイアウトの最適化やエア抜きの設置、空気の混入に強いポンプを初期段階で選定することで発生を予防できる課題でもあります。
きちんとポンプを定期的にメンテンナスしているのに急に流量が減ったという場合は配管のシールが甘くなっているかもしれません。ポンプだけではなく、配管の状態にも気を配ることで発生を防ぎましょう。





















