廃油の移送は一見単純な工程だと思われますが、実際は温度による「粘度の変化」や、金属粉などの「スラッジの混入」や発生した「スカムの混入」、地下ピットからの吸い上げに伴う旧入力不足の懸念など、複数の課題を抱えることがあります。「すぐにポンプがダメになる」「毎回呼び水しないといけない」など、負担になっているケースもあるのではないでしょうか。
本記事では、廃油移送に潜む技術的な課題とそのメカニズムを整理し、現場で実践できる安定移送のポイントと最適なポンプ選びについて解説します。
関連製品

廃油移送の課題とは?
廃油の移送が新品の油の移送と根本的に異なるのは、その「流体としての不安定さ」にあります。新品の油にはなかった様々な要因が絡み合うことで、現場で以下のような課題が出てきます。
・温度変化による粘度変動
新品の油でも見られる現象ではありますが、不純物が含まれている廃油では温度や経時劣化による粘度の変動が大きくなる傾向にあります。特に冬季は粘度が急上昇してドロドロになり、配管抵抗が増して流量が極端に低下することも珍しくありません。
・スラッジや固形物による詰まりと摩耗
水分や金属粉、スラッジやスカムなどの不純物が大量に混入しているため、ストレーナーの頻繁な詰まりや、ポンプ内部での激しい摩耗が引き起こされます。
・キャビテーションとエア混入
高粘度の廃油を地下ピットなどから吸い上げようとする吸入条件は、毎回の呼び水の必須化やキャビテーション発生の原因となります。キャビテーションはポンプや配管の寿命を短くする要因となるため、回避する必要があります。
・空運転による致命的な損傷
吸い込み不良のまま運転を続けると、メカニカルシールの焼き付きやステータの損傷など、ポンプ本体を更新しなくてはならないような結果につながる可能性が出てきます。
これらはいずれもポンプの流量低下という現象として現れます。その背景の理解が不足すると、現場の保守負担が増大する要因となってしまいます。
廃油を安定移送する方法とは?
温度による廃油の粘度変化を理解する
廃油の温度と粘度の関係を把握しておくことは、不要なトラブルを避けて安定的な移送を行うことにつながります。
廃油は温度が下がると急激に粘度が高まる傾向にあります。特に冬場の冷え込みにより廃油がドロドロになると、配管抵抗が増大するため、「吸い込まない」「流量が極端に落ちる」といった困りごとにつながります。また、高粘度状態での無理な起動は、モーターに過大な負荷を与え、電気代の負担増や故障の引き金にもなります。
この粘度変動による不安定運転を防ぐために、廃油の特性を理解した上で設備側での温度管理を行ったり、高粘度化してもスムーズに吸い込めるような配管・設備設計を行うことが効果的な対策となります。
吸込み側の配管条件を最適化する
廃油を安定して送るためには、ポンプの性能だけでなく、吸込み側の配管設計にも注意が必要です。
粘度が高くなった廃油では配管抵抗が大きくなるため、「短く・太く・曲がり角の少ない」配管設計が好ましいです。配管が細く長いと抵抗が大きくなり、ポンプに液が供給しきれずに流量が不安定になります。
また、吸上げ高さには物理的な限界があるため、理想的にはタンクからの押し込み(流れ込み)条件としたいところです。地下ピットからの吸い上げとなるケースでは、液面が低くなるにつれて条件が悪くなるため、吸い上げる場合は限界となる液面高さを把握する必要が出てきます。
さらに、タンクの吸込み口の位置が浅すぎると、空気を巻き込んでしまい吸入不良を起こす要因となるため、底部の形状にも注意を向けたいです。
スラッジや異物に対応できるポンプを選定する
廃油には金属粉やスラッジなどの異物が混入しているケースが多く見られます。こういった液体を扱うケースではポンプ部品の摩耗が激しくなり、能力低下が起こりやすくなります。
異物除去のためにストレーナーを設置するという処置が考えられますが、この場合高粘度の廃油では圧力損失がより大きくなって吸い込み条件が不利になってしまうというデメリットも存在します。
そのため、なるべくメンテナンスの負担を減らすためには、最初からスラリー性のある液体の移送に強いポンプを選定することが対策となります。具体的には、摩耗に強い材質やポンプ構造を持ち、定期的な分解時に洗浄しやすいメンテナンス性をあわせもつ機種を選ぶのが効果的です。
定期的な点検や洗浄で性能の低下を防ぐ
廃油を長期に渡って安定的に移送するために、定期的に保全作業を行うことが推奨されます。廃油に含まれる粘着性のあるスラッジはポンプ内部に堆積しやすい傾向にあり、定期的に取り除かないと流量低下や故障などの不具合につながります。
「最近流量が減ってきた」「ポンプから異音がし始めた」といった症状は、一時的な不調ではなく、ポンプの部品摩耗やポンプや配管の詰まりが顕著になってきているサインかもしれません。
こうしたサインが出始めたら、稼働状況に応じた定期的な分解点検と内部洗浄の実施を検討してください。流量低下時のチェックポイントを設定し、摩耗部品の交換周期をあらかじめ定めることが、安定的な稼働の一助となります。
廃油移送でおすすめのポンプ
ラジアルベーンポンプ
廃油移送に求められる要素を満たすな選択肢にラジアルベーンポンプが挙げられます。
このポンプは、自吸力が高い容積式ポンプであるため高粘度の廃油や地下ピットからの移送にも対応可能であり、さらにセラミックライナーを採用することでスラリー性のあるスラッジの移送でもポンプ本体の摩耗を抑制することができます。
また、ベーンの摩耗により能力低下が生じても、簡単にベーンを交換することができる構造のため、日頃のメンテナンスの時間を短縮することができます。機種によりますが、配管を取り外すことなく接液部を露出させられる構造にもなっていることも、分解洗浄の手間の削減に貢献します。
導入事例
スラッジ入り廃油移送
従来、廃油槽からセパレータへの移送にギヤポンプを使用していましたが、廃油中のスラッジ(汚泥)による内部摩耗が激しく、頻繁なポンプの能力低下と、その復旧にかかる多大なメンテナンスの手間やコストが課題となっていました。
これに対し、高い自吸力を持つ「ラジアルベーンポンプ(R型)」を導入しました。摩耗に強いセラミックライナー仕様を採用したことで、長期間にわたり能力低下を起こさず安定した移送を実現。さらに、万が一性能が落ちても部品(ベーン)を交換するだけで即座に復旧できるため、従来の大掛かりなメンテナンス作業が不要になり、ランニングコストの大幅な削減に成功しています。
伏虎金属工業の技術サポート
廃油移送の現場では、ポンプ単体の性能だけですべてを解決することは困難です。伏虎金属工業では、製品を販売するだけではなく、配管を行う上での注意点やポンプ稼働のポイントも含めてサポートします。
・現場条件に合わせた機種選定
液体の温度に伴う粘度変化やスラッジ含有量などをヒアリングし、最適なポンプを選定します。さらに、吸込み配管の短縮化やエア噛み防止など、配管レイアウトに関する注意点も確認し、設備の安定化を支援します。
・テスト運転と立ち上げサポート
実流体でのテスト運転や、現地での設備立ち上げにも対応し、稼働初期の不安や想定外のトラブル防止につなげます。
・トラブル解決
「急に流量が落ちた」などの不具合が発生した際には状況をヒアリングし、改善のために考えられることをご提案します。また、スラッジ摩耗を見据えた迅速な予備品供給により、長期的な安定稼働と保守負担の軽減に貢献します。
まとめ
廃油移送は、粘度変化やスラッジの混入、シビアな吸込み条件などが関与すると、一気に難易度が上がります。しかし、液体の特徴を把握した上で配管を最適化したり条件に合うポンプを選定することで、安定移送の実現を達成することができます。
地下ピットからの吸い込みや、冬場と夏場とで粘度が大きく変化するような液物性の場合は特に条件が厳しくなります。また、スラッジ入りの液体ではポンプの摩耗による能力低下のことも気にかけなくてはいけません。
これらの特徴への理解が欠けると、「急に流量が低下したけどその原因がわからない」ということになってしまうかもしれません。事前の対策と定期的なメンテナンスを行い、トラブルなく移送できる環境を作り出しましょう。
関連製品






















