固形物を含むスラリー液の移送では、「すぐに部品が摩耗する」「液漏れが起こりやすい」といったトラブルが起こりやすいものです。これは研磨性のある微粒子がポンプや配管、軸封などを削ってしまうことが原因です。
ただし、ひとくちにスラリーといっても、その硬さや大きさといった性質がまちまちであり、単純にスラリー移送に強いポンプを選定すればすべてが解決するという訳にはいきません。
本記事ではスラリーポンプの特徴と、選定における注意点について解説します。
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スラリーポンプとは?仕組みと基本構造を解説
スラリーポンプとは、砂や鉱石、金属の微粒子が混ざった液など、固形物を含む液体を移送するのに適したポンプのことを指します。
一般的な水用ポンプでスラリーを送ると、固形物が内部に詰まったり、高速で衝突する粒子によって部品が激しく摩耗したりしてすぐに故障してしまいます。
このため、スラリーポンプでは、スラリーと直接触れる部分には、摩擦に耐える耐摩耗・耐腐食素材が使われる傾向にあるほか、水用のものと比べてポンプ内部で固形物が詰まりにくくなるような基本構造をしていることが多いです。
ひとくちにスラリーといっても、その中の粒子の濃度や粒子の大きさ、液粘度は様々です。
条件に応じて最適な最適な材質や構造を選ぶことで、過酷な環境下でも安定的に稼働させることができるようになります。
スラリーポンプの主な種類とその特徴
遠心式ポンプ
スラリーポンプとして一般的に知られているのが「遠心式ポンプ」です。内部の羽根車(インペラ)を高速回転させ、その遠心力によって液体を連続的に押し出す仕組みを持っています。
大流量の移送が得意であり、低〜中濃度で低粘度の流動性のあるスラリー(泥水や鉱業の排水処理など)の移送に適しています。ポンプ内部での詰まりを防ぐために流路が広く設計されており、構造がシンプルなため初期コストやメンテナンス性に優れるといったメリットがあります。
一方で、高速回転するためインペラや内壁のライナーが摩耗しやすく、適切な耐摩耗素材の選定が長寿命化の鍵となります。
加えて、高粘度の液体の移送や低流量での移送は苦手としているため、こういったケースでは遠心式ではないタイプのポンプ選定が必要となります。
容積式ポンプ
遠心式では対応できない高濃度・高粘度のスラリーの移送を得意とするのが「容積式ポンプ」です。ポンプ内部の空間(容積)を変化させ、一定量の液体を力強く押し出して移送します。
遠心式と異なり、圧力変動に左右されず常に一定の流量を安定して送れるのが強みで、高圧での長距離移送にも適しています。代表的なものにスクリューポンプやダイヤフラムポンプ、ピストンポンプなどがあり、食品や化学、汚泥処理の現場で広く活躍します。
一方で、構造が複雑になりやすく遠心式よりも初期費用が高くなることや、定期的なメンテナンスを必要とするため、ランニングコストが高くなる傾向があるため、現場の条件に応じた使い分けが重要です。
スラリーポンプの主な用途とは?
鉱業・採石場でのスラリー移送
スラリーポンプの用途として、鉱業や採石場でのスラリー移送が挙げられます。現場では、採掘された鉱石や砂利を水の混合物を選鉱設備へ移送したり、泥水を長距離移送する目的でポンプが使用されます。
これらの工程では、硬い固形物を含む低粘度のスラリーを長時間にわたって移送するため、インペラなどの内部部品が激しく摩耗します。仮に摩耗によるトラブルでポンプが停止すれば、生産ライン全体がストップして、大きな影響が生じます。
そのため、移送ポンプとして、耐摩耗材を使用し、連続運転に耐えうる高い耐久性を備えたスラリーポンプが使用されます。
化学工場における液体・固形物混合物の移送
化学工場では、電池材料、研磨剤、固形物入りの廃液など、微細化された金属や粉を含む液体を数多く扱うため、これらの移送にもスラリーポンプは欠かせません。
これらの液体は高い粘度を持つことが多く、また、溶剤を使用していることが珍しくないため、スラリーによる摩耗だけに注意するのではなく、侵食性スラリーに耐えるものであるかを考える必要があります。加えて、強アルカリや強酸の液であるケースもあるため、ポンプの素材がそれに耐えられるかという視点も求められます。
化学系の液を使用する工程でのメンテンナス頻度を高めることは、単に時間や費用の負担が増加するだけではなく、溶剤や危険性の高い液体への暴露を増やし、安全上のリスクを増やすことにもなりかねません。スラリーポンプは単なる移送機器ではなく、工程の安定稼働と安全を確保するための設備となります。
硬い固形物を含む食品移送
食品製造の現場では、骨や果実の種、冷凍された具材など「硬い固形物」を含んだ液体の移送が求められる用途があります。
こういった場合、固形物がポンプ内部で詰まってしまうこと、硬い固形物によってポンプ内部が削れてしまうことでポンプの能力低下が早くなったり異物が混入しやすくなったりすることが課題となります。加えて、液の中に含まれる固形物が壊れて食感や見た目などの品質を損なうリスクも無視できません。
こういった懸念を解消する目的でスラリーポンプが使用されることがあります。これは、スラリーポンプは摺動部が少ないことから固形物の形状破壊を起こしにくいという特徴を有することが多いためです。加えて、分解洗浄しやすい構造である傾向にあり、衛生面が求められる食品には好都合であるということも理由として挙げられます。
スラリー液の移送でよくある課題とは?
インペラや内部部品の摩耗による性能の低下
スラリー液の移送の最大の課題が「摩耗」です。砂や鉱石、金属粉のような硬い固形物がヤスリのような研磨作用を持ち、ローターやインペラといった回転部分やポンプの内壁に激しく衝突してダメージを与え続けます。
導入初期は問題なく稼働していても、長期間の運転によって部品の摩耗が進むと液体を押し出す力が弱まり、流量や吐出圧力、ポンプ効率の低下が顕著に見られるようになります。この影響を放置すると、移送工程に必要以上の時間を要することになったり、押し込みが必要な工程で十分な吐出圧が得られず供給不良になったりといった現象としてあらわれます。
このため、適切なタイミングでの部品交換やメンテナンスの実施、耐摩耗性に優れた構造の選定が重要になります。
固形物の詰まり
スラリー液移送では「固形物の詰まり」も課題のひとつとなります。具体的には、含まれる粒子や繊維状の物質がポンプ内部に引っかかり、閉塞が引き起こされるリスクが存在するということです。
狭い流路を通過する可能性があるポンプを選定した場合、内部で流路よりわずかに大きい固形物が詰まってしまうリスクが発生します。また、滞留部分ができやすい構造のポンプでは、固形物がそこに少しずつ蓄積し、洗浄をが不十分だとやがて閉塞につながるという結果につながります。復旧には設備の分解清掃や本来なら不要だったはずの部品交換が必要となり、多大な労力と時間を奪われるため、固形物のサイズや形状に適したポンプの選定が必要になります。
流量低下や圧力不安定の問題
スラリー液の移送では、前述の通り流量の低下や吐出圧力の不安定化の可能性を考慮する必要があります。その原因は実は様々あり、部品の摩耗、配管の部分的な詰まり、気温低下に伴う液粘度の上昇など多岐にわたります。
流量の低下は工程全体のリードタイムの長期化を招く他、一定以上の流量で液を供給する用途においては機器の故障にもつながりかねません。また、圧力の上昇はポンプへの負荷増加による故障のリスクにも繋がり、圧力の低下は流量の低下と同様にポンプと連動する周辺機器への悪影響を招きます。
メンテナンス頻度の増加によるコスト負担
スラリー液移送において、摩耗や詰まりによる頻繁なメンテナンスは大きなコスト負担となります。ローターやライナーなどの摩耗部品の交換費用に加え、メンテナンスに伴うライン停止による生産計画のズレや保守に関わる手間も軽視できません。
初期費用を抑えようと安価で不適切なポンプを選ぶと、部品交換を頻発に行わなくてはならなくなり、結果的にトータルコストが大幅に跳ね上がるということも珍しくありません。保全の負担を軽減し、長期的な視点で運用コストを削減するには、スラリーという過酷な液の移送に適した耐摩耗性に優れるポンプを選定することがポイントとなります。
スラリーポンプの選び方
スラリーの性質(粒径・濃度・粘度)を把握する
スラリーポンプ選定において最も重要なのは、移送する「液体の性質」を正確に把握することです。特に、固形物の大きさ(粒径)、含有率(濃度)、粘度といった情報はポンプの選定にダイレクトに影響します。
例えば、ポンプのクリアランス(隙間)と固形物の粒径の関係性が不適切だと詰まりが起こりやすくなり、高濃度のスラリーではポンプへの負荷が大幅に増大します。また、粘度が高くなると流動性が落ちて流量が低下するため、低濃度と高濃度では適したポンプが全く異なります。スラリーの物性をよく理解しないままポンプを選定すると、導入直後に不具合が発生するという失敗を招きます。
耐摩耗性や材質を考慮して選定する
スラリー移送では、固形物による「摩耗」と、特に化学系の液体の場合は薬液などによる「腐食」が同時に発生する過酷な環境になることが珍しくありません。そのため、ポンプ内部の材質選定がその寿命を大きく左右します。
例えば、砂などの硬い粒子を含む場合は耐摩耗性に優れた「高クロム鋳鉄」、腐食性が高く摩耗も伴う場合は「特殊ゴム」などを適切に使い分ける必要があります。初期費用を抑えようと条件に合わない安価な材質を選ぶと、すぐに部品がすり減り、頻繁な交換によるライン停止やトータルコスト増大という結果になります。流体に最適な材質を見極めることでランニングコストの抑制につなげたいところです。
メンテナンス性を確認する
スラリーを扱う以上、どうしても定期的な部品交換や洗浄は避けられないため、「メンテナンスのしやすさ」も見落としてはいけない基準となります。分解や洗浄に時間がかかる複雑な構造であったり、消耗部品の納期が長いようなものを選定すると、結果として長期間のライン停止を伴うことになり、大きな損失につながってしまうかもしれません。
そのため、現場でスムーズに部品交換や洗浄が完結するシンプルな構造であるか、分解洗浄後には組み付けのミスを起こしにくいような構造をしているかという点からも判断が必要です。迅速なメンテナンスはダウンタイムを最小限に抑えるとともに、トータルコストの削減にもなります。
スラリー液の移送でおすすめのポンプ
おすすめポンプ
スラリー液の移送には「二軸スクリューポンプSQ型」が適しています。
最大の強みは、内部のスクリュー同士やケーシングが接触しない「非接触構造」にあります。金属部品が擦れ合わない構造であり摺動部が極めて少ないため、固形物を含むスラリーを移送しても部品による摩耗が大幅に軽減されます。
加えて、スラリー液の接触によるローターやケーシングの摩耗が発生しても、回転数を上げることで流量や圧力の低下分をカバーすることができます。
これらの特徴は、ポンプ本体の長寿命化につながる大きな要因となります。
また、液を連続的に押し出す移送原理のため、固形物の詰まりを起こしにくいという特徴もあります。スラリーの粒径にあわせてカスタマイズ対応も可能であり、広い用途で使用できます。
導入事例
スラリー液(酸化チタンスラリー)移送の事例
化学工場での「酸化チタンスラリー」の移送工程において、以下のような課題を解消しました。
脱水機からタンクへ移送する際、従来のポンプでは研磨性の強いスラリーによって内部が激しく摩耗し、短時間の運転で能力が低下してしまう深刻な課題がありました。性能回復のための頻繁な部品交換により、多大な手間とランニングコストが発生していました。
そこで「二軸スクリューポンプ(SQ型)」を導入。万が一摩耗しても回転数を上げることで能力低下を補えるため、部品の交換頻度が激減し、メンテナンス工数とランニングコストの大幅な削減に成功しました。
スラリー液(ごま油+珪藻土)移送の事例
食品工場における「ごま油+珪藻土」の移送工程での導入事例です。
タンク間の移送において、従来のポンプでは研磨性のある珪藻土によって部品が激しく摩耗し、1年足らずで流量が大幅に低下していました。その結果、頻繁な部品交換が必要となり、メンテナンスの手間と費用が大きな負担となっていました。
そこで「二軸スクリューポンプ(SQ型)」を導入。万が一摩耗して流量が落ちても、回転数を上げることで能力低下を十分に補えます。これにより、5年間もメンテナンスフリーで安定した流量を維持できるようになり、保守コストの大幅な削減に成功しました。
技術サポート
スラリー液の移送には、部品の摩耗やポンプの詰まりといったトラブルが付き物です。伏虎金属工業では、単に製品を販売するだけでなく、お客様の現場の課題にあわせて解決策を提案いたします。
選定段階では、スラリーの粒径や濃度、粘度、ライン構成といった条件をヒアリングし、これまでの実績に基づき、詰まりにくいポンプ構造へのカスタマイズまで踏み込んだ提案をいたします。
導入後も、迅速に相談やメンテナンス、消耗部品の供給を行う体制を整えています。導入から運用まで、現場の困りごとの解決を支援いたします。
まとめ
スラリー液の移送は、固形物による激しい摩耗や配管の詰まりなど、設備への負荷が大きい工程です。安定稼働とメンテナンスコスト削減を実現するには、スラリーの粒径・濃度・粘度を正確に把握し、最適な構造と耐摩耗材質を持つポンプを選定することが不可欠です。
伏虎金属工業では、移送が難しい流体にも対応可能な「二軸スクリューポンプ」などの製品と技術サポートにより、現場の課題解決を支援いたします。ぜひお気軽にご相談ください。
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