食品や医薬品、化粧品の製造現場では、衛生管理と品質維持の両方が要求されます。このとき、配管やタンク、製造設備に加え、移送に使用されるポンプにも目を向けなくてはいけません。すなわち、分解や洗浄が用意であり、内部の液溜まりによる菌の繁殖やコンタミ(異物混入)といったリスクを払拭できるポンプの選定が求められることとなります。
製品の安全性とブランドの信頼を守る要素のひとつとして、サニタリーポンプの構造理解と選定がポイントとなります。本記事では、その必要性から種類、選び方について解説いたします。
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サニタリーポンプの必要性
異物混入リスクを低減できる
食品や医薬品の製造でサニタリーポンプが必要とされる理由は、ポンプの構造そのものが品質リスクを左右する要因となるからです。
内部に段差や隙間(デッドスペース)が多いポンプを使用すると、そこに流体が滞留し残留物となります。これが後から剥がれ落ちて製品に混ざってしまうと、雑菌などの異物混入(コンタミ)を引き起こしてしまうこととなります。
サニタリーポンプは、流路内の段差を極力なくし、表面を滑らかに仕上げることで液の付着や滞留を防ぐように設計されています。異物混入が大きな品質問題となる業界においては、この設計によって異物混入リスクを低減させるための要素のひとつとなります。
洗浄性を確保できる
サニタリーポンプは洗浄により残留物が除去されやすい構造であることが要求されます。洗浄にはCOP(分解)洗浄やCIP(定置)洗浄といった方法がありますが、いずれにおいても対応しやすい仕様であることが好ましいです。
COP洗浄においては機械の分解や組立が容易であり、デッドスペースや液溜まりなど洗い残しの発生が起こらない構造であることが好ましく、CIP洗浄ではポンプ内に洗浄液が十分に行き渡るような構造であることが望まれます。
また、アルカリや酸を用いた洗浄が行われることも珍しくないため、これらに対する耐久性を備えていることも要件のひとつとなります。
導入される現場においてどの程度の頻度で洗浄を行うのか、どのように洗浄を行うのかを加味して適切な構造と材質のポンプを選定することにより、衛生面と作業効率の両立を達成することができます。
品質を安定化できる
食品や化粧品の製造では、移送工程も品質管理の重要な一要素となります。移送中に強いせん断や撹拌が加わることは、液質の変化による品質への悪影響を招く要因となります。それ以外にも、一定の流量と圧力で液の供給を行い、移送後の工程を安定化させることなども要求されます。
サニタリーポンプの中には、移送中の流体へのダメージを抑えるための構造を持つ機種があります。流体のデリケートな構造を壊さずに安定した供給ができるため、生産時に高い再現性が確保されます。移送工程を見直すことによっても、製品品質のばらつきを防ぐことが可能になります。
サニタリーポンプの主な種類
遠心ポンプ
遠心ポンプは、内部の羽根車(インペラ)を高速回転させ、その遠心力を利用して液体を押し出すポンプです。水や飲料などの低粘度の液体移送に特化しており、こういった用途で最も汎用的に使用されています。連続的で安定した流量を保て、大流量にも対応できるのが特徴です。
構造がシンプルで液溜まりができにくいため、分解洗浄やCIP洗浄が容易で、衛生状態を高く保ちやすいメリットがあります。一方で、高粘度液や泡立ちやすい液には不向きであり、粘度が高くなると移送能力が著しく低下します。また、移送液に回転による撹拌やせん断が加えられやすい傾向にあります。
容積式ポンプ
容積式ポンプは、仕切られた空間に液体を取り込んで押し出す仕組みのポンプです。遠心ポンプが苦手とする高粘度な液体の移送に優れています。
また、移送原理上、一定の流量を安定して供給できることや、流体をかき回さず送るため、デリケートな素材の形状を崩さず、品質を維持したまま移送できるといった特徴があります。
一方で、内部構造が複雑な機種のものでは、分解洗浄や組立作業が複雑になる場合があります。サニタリー用途においてはCIP洗浄対応や分解しやすい構造であるかを判断しながら選定する必要があります。
サニタリーポンプの選定ポイント
洗浄性
サニタリーポンプを選ぶ際、洗浄により付着物や菌をきれいに洗い落とせることが最大の要件となります。複雑な構造で分解や再組立が困難なもの、ポンプ内部で液に触れるにも関わらず手の届きにくい部分が存在するものでは、洗い残しのリスクや、分解洗浄後の再組立時に組付け不良を起こしてしまうリスクがあるため好ましくありません。
このため、簡単に分解・再組立ができ、液に触れる部分がむき出しになるような構造のポンプであることが重要となります。
より理想的には、配管に接続したまま洗浄液を循環させる「CIP洗浄」に対応していることが好ましいです。手作業での分解洗浄は、作業者による洗浄ムラが発生したり、分解時に菌が付着したりするリスクがあるためです。この点、CIP洗浄で分解を必要としない場合、作業者への依存や分解に伴う懸念を解消することができます。
デッドスペースの有無
デッドスペースとは、ポンプ内部の段差や隙間など、流体が滞留してしまう「死角」のことです。このデッドスペースの有無は、衛生性に関係する大きな要素です。
流路に隙間があると、そこに液が溜まってしまい、とどまった液は腐敗による菌の繁殖の温床となったり、異物発生の原因となったりしてしまいます。液溜まりの部分から発生した菌や異物が移送液の中に入ってしまうと、衛生管理上で重大な悪影響が出てしまいます。いくら洗浄しても汚れが取り切れないような構造では、洗浄効果は不十分なものとなってしまいます。
以上より、「見えない部分で品質リスクが発生する」ことを念頭に置き、液溜まりができないような構造であることが求められます。
材質(ステンレス・表面処理)
サニタリーポンプでは、ポンプの材質や表面処理にも目を向ける必要があります。食品や医薬品の現場では、特に耐食性に優れたステンレス材が採用される傾向にあります。
また、金属表面の平滑性もポイントとなります。表面に凹凸が残っていると、そこに液が入り込んで付着物が残り、菌の繁殖が進むきっかけとなってしまう懸念があります。研磨加工などによって表面の凹凸が一定水準以下になるように仕上げることで、洗浄性が向上します。
加えて、接液部の材質にも注意が必要です。流す液体に合わない材質のものを使用すると、腐食や摩耗によるトラブルを招くこととなります。衛生規格をクリアし、安全なラインを構築するためには、液体の特徴に応じた材質選定が求められます。
おすすめのサニタリーポンプ
二軸スクリューポンプ
サニタリーポンプとして二軸スクリューポンプが挙げられます。
このポンプは非接触式の構造であるため、ポンプ由来の金属コンタミのリスクを払拭することができます。また、分解洗浄・再組立が簡単な構造をしていることに加え、数千rpmでも安定的に稼働できる構造により、ブースターポンプを併用することなくCIP洗浄を行うことができます。これらの特徴は、洗浄による衛生面の確保を容易にします。
また、移送中にデリケートな液体にせん断や撹拌としったダメージを与えず送ることができる点も大きな特長です。高粘度液の移送も得意としており、流動性の低い食品や化粧品に対して効果的に使用することができます。
「移送時の品質劣化」や「洗浄工数の負担」を解消するための手段して、設備見直しの候補に加えてみてはいかがでしょうか。
導入事例
事例
医薬用ゼリーの製造ラインで、「手作業による分解洗浄に時間と労力がかかる」という課題を解決した事例です。
現場ではCIP洗浄対応を希望していましたが、既存ポンプでは洗浄水の流速が出ない状態であり、専用の洗浄ラインを新設するにはスペースが足りず、やむなく手作業で洗浄を行っていました。
そこで、回転数の変更により高粘度なゼリーから低粘度の洗浄水まで幅広く送れる「二軸スクリューポンプ」を導入。省スペースのまま、1台でゼリー移送とCIP洗浄の両方を完結させることができました。洗浄品質が安定し、年間約数百万円レベルの大幅なコスト削減に繋がりました。
事例
高粘度なカレールーの移送ラインにおいて、「毎日のメンテナンスの手間」という課題を解決した事例です。
規定上、生産終了後に毎回分解洗浄を行う必要があったものの、粘度が高く油分を含むカレールーはポンプ内部に付着しやすく、日々の手作業による洗浄に多大な時間と労力を要していました。そこで、高い移送能力と洗浄性を兼ね備えた「二軸スクリューポンプ」を導入。
分解洗浄を行う前にポンプを高速運転させて洗浄液の通水による粗洗浄を行うことで汚れのほとんどを洗い流すことができ、加えて分解洗浄も簡単な構造のため、洗浄時間の大幅な短縮につながりました。
技術サポート
サニタリーポンプの選定では、カタログスペックを見比べるだけでなく、衛生基準を満たせるものであるか、流体の特性(粘度・温度・固形物の有無)に似合ったものであるかを考慮しなくてはいけません。
その判断にあたり、実際の液体を用いて導入前の実液テストを実施することは大きな助けとなるでしょう。「本当に移送前後で液体の状態が変化しないか」「洗浄でネックになる部分はないか」等検証することで、異物混入や洗浄不良、品質維持といった衛生・品質のリスクを未然に防ぐことにつながります。
導入してみたら想定していなかったトラブルが発生するケースは珍しくありません。選定や運用の懸念をなるべくなくすために、まずは実液テストからご相談ください。
まとめ
サニタリーポンプは、食品や医薬品の製造現場での衛生管理と品質維持のための重要な要素のひとつです。ポンプ内で液溜まりや異物混入が発生するリスクや、分解洗浄やCIP洗浄時に洗い残しのリスクが極めて低いことが求められます。このため、選定時には、デッドスペースの有無や液体に適した材質であるかを慎重に見極めることが重要です。
導入前の実液テストによる検証なども活用しながら、現場環境や扱う液体に適した機種を導入して、安全かつ生産性の高いラインを構築しましょう。
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