塗料の移送工程では気泡の混入やそれに伴う塗膜不良、塗料に含まれる顔料によるポンプの摩耗やバインダーの影響による軸封部からの液漏れといった課題をよく耳にします。これらのトラブルの多くは、塗料の特性に似合ったポンプを選定することで解決できるケースが多くあります。
塗料はドロっとしていることが多く、顔料などの固形分やエマルジョン系のバインダーを含むケースがあるなど、扱いが厄介な流体のひとつです。塗料の特性にあわせたポンプ選定は製品の品質と生産性に直結してきます。本記事では、塗料移送での課題と、それらを解決に導く要件などについて解説します。
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塗料移送時の課題とは?
顔料や固形分を含む
塗料は色をつけるための顔料や、機能を持たせるためのバインダー、フィラーといった「固形分」を含んだ液体であり、これらは時にポンプに大きな負荷を与える要因となります。
まず、硬い顔料やフィラーなどの粒子は研磨作用を持つため、移送時にポンプ内部を激しく摩耗させる要因となります。さらに、軸封部(シール部)にバインダーが固着すると、シールが十分に機能しなくなることで液漏れにつながる恐れもあります。加えて、移送中に粒子が沈降・堆積したり凝集したりすると品質が損なわれるため、粒子の均一な分散状態を保ちつつ、摩耗や漏れに強い構造のポンプを選ぶことが要件として挙げられます。
せん断に弱い(品質に影響)
デリケートな塗料を移送する際には、「せん断(流体をかき混ぜたり押し潰したりする力)」の影響にも目を向ける必要が出てきます。塗料にせん断が加わることで、均一だった顔料やバインダーの分散状態が崩れて液の分離や意図しない粘度変化が引き起こされることになりかねないためです。
これらの現象は、最終的な塗膜の色ムラや光沢の低下、密着不良といった品質トラブルのもととなります。ポンプの選定によっては移送中に強いせん断が加わってしまい、「液は送れるが品質が落ちる」ということになるかもしれません。塗料の状態を崩さず、優しくせん断が少ないままで移送できるポンプの選定が求められます。
気泡が品質不良につながる
塗料の移送工程で空気を巻き込んでしまうと、後の工程で品質不良が生まれてしまう原因となるかもしれません。
塗料中に混入した気泡は、塗装後にクレーター状のムラができる要因になったり、塗膜を貫通する「ピンホール」を発生させたりと、外観やその他の機能でNGとなるようなトラブルを引き起こします。また、ひどい場合、塗膜内部に気泡が残ることは、密着性や耐久性の低下という結果を招く可能性もあります。
残液低下時の空気の吸い込みや、移送中に撹拌が加わることによる気泡発生を防ぐため、エアを巻き込まない配管構成やポンプ構造、脱泡機能を備えた機器の選定が品質維持のためのポイントとなります。
塗料用ポンプの主な種類
塗料の移送において「とにかく液が送れればよい」という考え方をしていると、上記のような各種トラブルを招く要因となります。ポンプには多様な種類があり、粘度への対応幅やせん断力、脈動(吐出量の波打ち)といった特性が全く異なります。塗料の性質に合わないポンプを選ぶと、顔料の分散破壊や気泡混入などのトラブルを招くため、それぞれの強みと弱みを把握することが重要です。
以下によく使われるポンプの特徴を整理します。
| ポンプ種類 | 粘度対応 | 脈動の有無 | せん断の強さ | メンテナンス性 | 耐摩耗性 | 運転音 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ダイヤフラム | △〜◎ | 大 | 中 | ○ | ○ | × |
低粘度の塗料の移送。 脈動やせん断を気にしないシーンで使用。 |
| ギア | ◎ | 小〜極小 | 強 | △ | △ | × |
低〜高粘度の塗料の移送。 せん断を気にせず、摩耗を生じさせにくい液。 |
| ベーン | ○ | 小 | 中〜小 | ◎ | ○〜◎ | ○ |
低〜比較的高粘度の塗料の移送。 汎用性が高く、広い用途で使用可能。 |
| スクリュー | ◎ | 極小 | 極小 | ◎ | ◎ | ○ |
低〜高粘度の塗料の移送。 摩耗性が特に強い液体や変質しやすい液の移送、 移送中の泡立ちを避けたい用途に。 |
【各ポンプの特徴】
・ダイヤフラムポンプ:扱いやすく汎用性が高い反面、吐出時に脈動が発生する傾向にあるため、精密で均一な塗布には不向き。
・ギアポンプ:高粘度液を力強く送れますが、歯車で液をすり潰すため「せん断」が強く、塗料の変質や摩耗が起きやすい特徴がある。
・ベーンポンプ:汎用性が高くメンテナンス面も含め扱いやすい。ギアやダイヤフラムほどではないものの、構造上多少のせん断や摩耗は発生。
・スクリューポンプ:脈動やせん断が極めて少なく、変質しやすい塗料の移送にも対応可能。ただしイニシャルコストは他のものと比べ増えるため、用途によってはオーバースペックになりえる。
ポンプ選びには「どれが一番優れているか」という絶対的な正解はありません。塗料の液質や求める最終製品の性能、現場の課題に応じて適切なポンプを選定することが重要です。
塗料用ポンプを選定する際のポイント
粘度への対応力
一口に塗料といっても、水のようにサラサラなものからペースト状の高粘度なものまで多種多様なものが存在します。そのため、塗料の粘度に適したポンプを選定しないとトラブルにつながることがあります。
選定したポンプでは対応できないような粘度のものを移送しようとすると、吸い込みや吐出不良を起こして流量が不安定になる他、ひどい場合にはポンプの破損につながります。また、見落とされがちですが、塗料は一定期間以上静置しておくと、顔料の沈降や粘度上昇が発生します。移送前に液を撹拌するなどしておけば回復させることもできますが、何もしないまま移送を開始すると、想定していたより粘度が高いものや固形分比率が多いものを送ることになってしまいます。このため、幅広い粘度や固形物入りの液体に余裕を持って対応できるポンプを選ぶことでトラブルを回避することが好ましいです。
せん断・撹拌の少なさ(塗料品質維持)
塗料移送用のポンプを選ぶ際には、液にせん断や撹拌が加わっても問題ないか把握しておくことが望ましいです。
液によっては移送中に加わるせん断によって塗料に含まれるバインダーが析出したり、特にデリケートな液では粘度が大きく変化したり、移送中に変質してしまうことがあります。
また移送中に塗料が泡立ってしまうと、塗布したあとに塗りムラになってしまう恐れがあります。
これらが起こると、顔料の分散状態が崩れることや気泡が混入することで塗膜の均一性が失われてしまったり、バインダーが変質することで定着性に悪影響が出たり、ポンプからの液漏れにつながったりといったトラブルへと発展しかねません。送れはするものの問題が頻発するということを避けるために、液の性質を把握した上で要求に合うポンプを選定する必要があります。
脈動の少なさ(塗膜安定)
塗料をどのような用途で移送するのかによっては、脈動の発生にも注意が必要です。脈動とは、ポンプが液を押し出す際に生じる流量や圧力のばらつきのことを指します。
塗料を塗布するような用途で脈動が大きいポンプを使用すると、吐出量が安定せず塗膜の厚さが一定になりません。結果として、表面に波状のムラができたり、塗装がかすれたりと、品質低下の要因となってしまいます。
塗膜の均一性は、製品の見た目に影響するほか、機能性の塗料を塗布する場合には性能面にも大きな影響を与えます。均一な仕上がりを維持するためには、一定の流量を吐出できる低脈動ポンプの選定が求められることとなります。
耐摩耗性
塗料用ポンプ選びでは、ポンプの耐摩耗性はメンテナンスコストに大きく影響が出ます。塗料には顔料やフィラーといった硬い固形分が含まれており、これらはポンプ部品を削る研磨作用をもたらします。
耐摩耗性が低いポンプを選ぶと、短期間で部品がすり減り、流量の低下や軸封部からの液漏れといったトラブルを引き起こします。結果として、高頻度での部品交換や修理対応が必要となり、メンテナンスの手間とランニングコストが膨れ上がってしまいます。長期的な安定稼働とコスト削減には、摩耗に強いポンプの選定もポイントとなります。
洗浄・メンテナンス性
塗料は固形物を含んでいたり、定着剤としてバインダーを含んでいたりするため、これらのポンプ内での滞留物を除去するための定期的なメンテナンスが必要です。もしポンプ内部に塗料が残って固化してしまうと次工程で異物として混入するおそれがある他、ポンプの作動不良の原因にもなります。
また、分解や洗浄に時間がかかるポンプを選ぶと、色替えや定期メンテナンスなどのたびに現場の作業負担が増加することになります。逆に、短時間で簡単に分解・洗浄できるポンプを選べば、作業効率が向上することを意味します。移送のことだけではなく、運用・保守まで含めた選定を行うことでトータルコストの削減に繋がります。
塗料を安定移送するおすすめのポンプ
ラジアルベーンポンプ
塗料の移送の有力な選択肢として、ラジアルベーンポンプが挙げられます。
一般的な塗料の粘度であれば問題なく取り扱えることに加え、セラミックライナー仕様のものを用いれば、顔料を含む塗料でもポンプの摩耗を抑えることができ、長寿命を維持します。消耗部品は基本的にはベーンと呼ばれる部品のみであり、取り替えも簡単です。さらに、機種によっては配管を外さずに接液部を洗浄できるため、色替え作業や日常のメンテナンス負担の軽減にも効果を発揮します。
二軸スクリューポンプ SQ型
変質しやすい塗料や高粘度の塗料の移送には二軸スクリューポンプが適しています。
大きな特長は、せん断や撹拌を加えずに移送できることです。これにより、デリケートな分散状態を壊したり、移送中に塗料を泡立てたりすることを抑えながら安定した流量でラインへ供給することができます。加えて、摩耗に強い、洗浄に時間がかからないといった特徴もあるため、メンテナンスの観点からも利点を出すことができます。
また、その構造により高粘度液の移送を得意とするため、通常の塗料よりも高粘度の液を扱う際には有力な選択肢となります。
導入事例
事例
水性インクの原料である顔料懸濁液を分散機へ移送する工程の事例です。
従来使用していたポンプでは、硬い顔料の研磨作用によって部品が激しく摩耗することによって短期間で移送能力が低下してしまい、メンテナンス頻度の増加と多大なランニングコストがかかっていました。
そこで、「ラジアルベーンポンプR型」を導入。摩耗しやすいケーシング内部にセラミックライナーを施した独自構造によって耐久性が大きく向上。摩耗による能力低下とコストの大幅な削減を実現しました。
事例
タンクから一斗缶へ塗料を充填する工程の事例です。
従来使用していたダイヤフラムポンプでは、移送時に塗料が泡立ってしまい、あふれないようにするために意図的に充填量を減らす必要がありました。また、脈動による充填量のばらつきや、液質の変化も見られたため、課題となっていました。
この工程に「二軸スクリューポンプ(SQ型)」を導入。液にせん断を与えない無脈動の移送により、発泡や塗料の変質を抑制。さらには充填量のコントロールも容易になり、品質と作業性が大きく向上しました。
技術サポート
塗料は粘度や固形分の含有量、せん断に対する懸念など、考慮すべき点を多く持つ流体です。カタログのスペック表だけで「送れるだろう」と判断すると、導入後に塗膜不良や短期間での部品交換といった課題を引き起こしかねません。だからこそ、実際の塗料特性や運用条件に完璧に適合させる「技術サポート」が極めて重要になります。
伏虎金属工業は、単にポンプを販売するだけでなく、移送現場での課題解決を支援いたします。
・実液テストによる事前検証
必要に応じて、お客様が実際に使用されている塗料を使った事前の移送テストを実施することが可能です。せん断による品質劣化等が起こらないかを実環境に近い形で確認し、導入前の不安を解消します。
・現場に寄り添う原因分析と選定支援
流量や配管レイアウト、温度変化といった現場条件をヒアリングし、条件に合った機種をご提案します。配管条件や設備配置からの見直しが必要な際には、その旨も提案いたします。
・導入後のフォロー
運用開始後も、メンテナンスの相談や突発的なトラブルへの対応、交換部品の迅速な供給など、現場ごとに異なる条件に合わせてサポートします。
「今の品質不良をポンプで改善できるか知りたい」「選定が難しくて困っている」という方は、ぜひご相談ください。
まとめ
塗料の移送では、単に「液を送る」ことだけではなく、移送中の「品質を維持する」ことや、塗料に含まれる顔料などによる摩耗の発生にも気を向けなくてはなりません。そして、これらの課題を解決するには、塗料の特性に似合ったポンプ選びが不可欠です。
伏虎金属工業では、耐摩耗性に優れた「ラジアルベーンポンプ」や、液にダメージを与えず移送する「二軸スクリューポンプ」をはじめ、過去の事例で得た知見をもとに現場の課題解決に貢献します。
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