製造現場において、異物や固形物を含む液体の移送が求められる工程は珍しくありません。特に食品工場では、ジャムやドレッシング、お菓子の原料など、ナッツ・ごま・果肉(の種)といった固形物を含む製品が数多くあり、その製造工程では「ポンプの詰まり」「移送中の固形物の破砕」といった課題に直面します。
本記事では、これらの課題を解決するためのポンプ技術と、実際の導入事例をご紹介いたします。
固形物を含む液体移送で生じる問題とは?
製造現場において、ナッツや、ごま、果物の種といった固形物を含む液体の移送は難易度の高い工程であり、一般的な羽根ポンプなどをそのまま使用すると深刻なトラブルを招くリスクがあります。
最大の懸念は、ポンプ可動部での詰まりや噛み込みです。硬い固形物がインペラやギアの隙間に挟まると、ポンプが緊急停止しライン全体がダウンします。これは生産性の低下や修復コストの増加といった課題へとつながる要因となります。
また、原型を保ちたい果肉や具材がポンプ内で潰れるリスクがあることも大きな課題です。製品の食感や見た目が損なわれ、品質低下を招きかねません。さらに、固形物が内部の死角に滞留しやすいため、洗浄不足による衛生リスクも無視できない問題となります。
このように、汎用のポンプでは設備の安定稼働と製品品質の担保が大きな懸念点となるため、固形物を壊さず、詰まらせないことに特化した移送技術が求められます。
固形物を含む液体移送に適したポンプの要件とは?
1. 固形物を破砕しない構造となっているか
ナッツや果肉、繊維といった固形物の形状は、製品の価値を左右する大切な要素となります。しかし、一般的なポンプの内部では、高速で回転する羽根によるせん断や撹拌、狭い通路での圧縮・衝突が生じることによって、素材の形状が崩れてしまうことも少なくありません。こうなると、最終製品の食感や外観が変化してしまうなど、製品の品質劣化の原因となってしまいます。
こういったことを防ぐためには、素材をそのままも形で押し出すような移送方式が求められます。これには、ポンプの稼働によって固形物に干渉しづらい広い流路設計や、素材に負担をかけない移送原理を備えたポンプを使用することが1つの鍵となります。
2. 高粘度でも安定して搬送できるか
固形物を含む流体は、ベースとなる液体の粘度が高いケースが多く、スラリーやペースト、ゲル状となっていることも珍しくありません。一般的なポンプでは、高粘度化に伴う内部抵抗の増大により流量が低下したり、過度な脈動や詰まりが発生して生産が不安定になるリスクがあります。
こうしたことを回避するために、高粘度下でも必要な吐出圧と流量を維持できるだけの性能を備えたポンプを使用するのが理想的です。
また、移送中に発生するせん断熱を抑え、液体の物性変化や固形物の変質を防ぐ設計であることも求められます。高粘度液を扱う際にもポンプへの負担を抑えられ、かつ十分な吐出力を持つ構造のものを使用することで、長距離や高低差のある配管条件でも移送することができるようになります。
3. サニタリー設計(衛生性・異物残留リスクの低減)となっているか
食品、医薬品、化粧品分野の製造現場では、製品の安全性と品質を担保するためにサニタリーポンプを使用することが重要となります。特に、固形物を含む流体の場合、内部の段差や隙間に微細な固形物が残留しやすくなるため、菌繁殖や異物混入のリスクを割けるために段差や隙間がない構造のものや、分解洗浄が容易な構造のポンプが求められます。
サニタリーポンプは、内壁や接液部にデッドスペースを作らない構造を採用しています。これにより、分解せずとも洗浄液を循環させるCIP(定置洗浄)で高い洗浄効果を発揮できるため、固形物残留による影響の懸念を大きく減らすことができます。
また、ポンプ内部に存在する摺動部からの金属摩耗粉の混入を防ぐ設計であるかも、クレームリスク低減には重要なポイントです。
さらに、運用面では分解洗浄の容易性も生産効率に寄与する課題となります。なるべく単純で簡単な操作で短時間に分解・組立が可能な構造であることは、洗浄工程の負担を軽減させるとともに、衛生面を確保する上でも効果的です。サニタリー設計の導入は、高度な衛生管理体制を構築するとともに製品の信頼性を支える基盤にもなります。
固形物を含む液体移送におすすめのポンプ
二軸スクリューポンプ
二軸スクリューポンプは、2本のスクリューによって作り出される空間が連続的に前に押し出される移送原理をしています。これにより、液中に含まれるごまやナッツ、果肉など固形物の破損を抑制しながら移送することができます。
また、移送する液に含まれる固形物のサイズにあわせてポンプの仕様を微調整することにより、イチゴの種のような硬くて小さい固形物が含まれる液でも、2本のスクリューの間などでの固形物の詰まりの発生を抑えることができます。
分解洗浄も簡単な構造であることに加え、CIP洗浄にも対応しているため、サニタリー性も高く衛生的に使用することができます。
固形物を含む液体移送の導入事例
ジャム
従来のポンプでは液の移送時に中に含まれる果物の種が詰まってしまうことが度々あり、そのたびに復旧に時間が取られてしまっていました。
また、使用後に分解洗浄を行っていましたが、再組立する際にちょっとした調整のズレで動作不良を起こしてしまう可能性があるので、常に注意しながら行う必要がありました。
ここに二軸スクリューポンプを導入することで、種の詰まりにより緊急停止が発生しなくなり、また洗浄する際には普段はCIP洗浄で対応できるようになり、分解洗浄が必要な場合でも簡単に作業を行えるようになりました。
液卵
割卵機から供給される液卵をポンプで次工程で使用するタンクに移送する工程で、従来のポンプでは液卵に混入してくる卵の殻が噛み込んでしまったり、移送中に加わるせん断によって最終製品の品質低下が発生することがあるという課題があった。
また、使用後はCIP洗浄を行っていたが、このためにブースターポンプを別途用意する必要があった。
ここに二軸スクリューポンプを導入することで、卵の殻が混入してきてもポンプ内で噛み込ませることなく移送できるようになり、移送中のせん断も抑制できたため最終製品の品質維持にもつながった。
また、回転速度を速くすることによりブースターポンプなしでもCIP洗浄を完結させられるようになった。
固形物を含む液体移送ポンプ選定の失敗例
【事例】甘酒に含まれる酒かすが潰れて風味が変化
甘酒を撹拌タンクから次のタンクへ移送する工程でを新設するにあたって、汎用的なポンプでの移送を試みていたものの、液の中に含まれる固形物が柔らかいためちょっとした刺激で壊れてしまい、結果として甘酒自体の風味や食感が変化することが判明しました。
この工程に二軸スクリューポンプを導入することで柔らかい固形物を潰さずに次のタンクへと移送できるようになりました。これにより品質を落とさない移送方法が確立したほか、洗浄が簡単な構造であるため、生産終了後の分解洗浄も時間がかからずに済み、負担を減らすことができました。
【事例】スラリー移送で細かい粒子が詰まり、頻繁にライン停止
数十マイクロメートルサイズの微粒子を含むスラリー液を移送する工程において、既設のポンプでは少なくない頻度で微粒子がポンプ内部で詰まってしまうことがあり、チョコ停の原因となっていました。これが起こるとポンプ復旧のための作業が生じたり、定時内で生産が終了しなくなるために残業対応が必要になったりしていました。
このラインに、微粒子の大きさに合わせてポンプの仕様をカスタマイズした二軸スクリューポンプを導入。微粒子が詰まる頻度が激減し、生産性の向上につながりました。
伏虎金属工業の技術サポート
固形物を含む高粘度液体の移送は、カタログスペックのみでポンプを選定することは極めて困難です。粘度、粒径、固形物含有率、さらには温度変化といった様々な要素が影響してくるためです。伏虎金属工業は、単なる製品販売にとどまらず、工程全体の最適化を見据えた技術パートナーとして導入判断を支援いたします。
実液テストを通じた導入判断
導入前の不安を解消するため、当社では実液を用いたサンプル試験を重視しています。テストを通じて、固形物の破砕の有無や吐出安定性などを検証できます。これにより、理論だけでは予測できない現場特有の挙動を事前に把握し、確実な性能を担保するための選定ができるようになります。
運用・保守まで見据えたライン設計支援
移送性能だけでなく、導入後の洗浄性や運用負荷の低減まで考慮して提案を行います。現場の稼働時間やサニタリー要求に応じ、移送の安定化はもちろん、ライン停止リスクの低減、製品品質維持を同時に実現するための支援を行います。
私たちは、これまでの数々の実績に基づき、「この液が本当に送れるのか」という懸念に対するリスクを最小化し、生産性の最大化を共に追求いたします。
まとめ
固形物を含む液体製品の移送では、「壊さない・詰まらない・汚れにくい」ポンプの選定が求められています。
これからの製造ラインでは、単なる移送機器としてではなく、「品質保持と効率化を両立する設備」としてのポンプ選びが必要になると言えるでしょう。
固形物を含む液体搬送に適したポンプは、製品品質の維持、ラインの安定稼働、衛生性の確保といった観点で製造現場の強い味方となります。課題に応じたポンプ選定が製品開発と生産性の鍵を握っています。
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