CNTなどの炭素繊維やセルロースナノファイバー(CNF)、あるいは食品残渣など、繊維質を含んだ液体の移送を求められるケースがあります。しかし、一般的なポンプでは内部での絡まりや詰まりによるポンプ停止、繊維の切断による品質低下といったトラブルの発生が散見されます。生産ラインの安定稼働と素材の品質を守るにはどうすればよいのか。本記事では、繊維質移送特有の課題を整理し、ポンプ選定と対策のポイントを解説します。
繊維質を含む液体移送の課題とは?
化学工場における炭素繊維やパルプ、食品工場の残渣処理、さらには水処理分野での藻類回収など、繊維質を含む液体の移送ニーズは幅広い産業分野で見られます。
しかし、これらは単なる固形物の入った液とは異なり、繊維特有の長さや硬さといったパラメータが存在する他、繊維質が入っていることによる液粘度の上昇など、汎用的なスラリーポンプでは対応しきれない難しさがあります。
稼働中に発生しやすいのは、ポンプ内部での閉塞(詰まり)と回転部への巻き付きです。一般的な遠心ポンプのインペラ(羽根車)や弁の隙間に繊維が一度引っ掛かると、後から来る繊維が次々と絡みつき、短時間で流路を塞いでしまいます。これが発生するとポンプのロックやオーバーロードにつながり、結果として頻繁なライン停止や手作業による分解清掃など生産稼働率の大幅な低下に繋がります。
また、見落とされがちなのが繊維の切断や破壊といった品質リスクです。特に新素材開発や培養プロセスにおいては、ポンプのせん断によって繊維が寸断されると、最終製品の品質が大きく変化するなどといったトラブルに直結します。「詰まらせず、かつ切らずに運ぶ」。この要件をどう満たすかが、繊維質移送での大きな課題です。
以下では、実際に当社へ寄せられた相談事例をもとに、これらの課題がどのような形でトラブルとして顕在化したのかを紹介します。
【実例】繊維質を含む液体移送で起こりがちな失敗例
詰まりが頻発し、うまく移送できなかった
繊維質の移送において、現場で頻出するのがポンプ内部での閉塞(詰まり)です。
一般的な渦巻ポンプや狭い部分を通過する必要がある構造では、長い繊維がインペラに引っかかったり、狭い流路で噛み込みや閉塞が起こりやすく、そこに次々と繊維が堆積して急停止を引き起こします。
「一日に何度もポンプがストップしてラインが止まり、そのたびに分解清掃している」
という相談は珍しくありません。これでは生産効率が落ちるだけでなく、メンテナンスコストの増大を招きます。
これを解消するには、繊維がスムーズに通過できる流路を確保し、かつポンプ内部の回転部が接触しない構造への見直しが有効な解決策となります。
移送中に繊維が切れて後工程での処理がうまく行かなかった
ポンプを通した際に壊れやすい繊維状のものが切れてしまうという事例は、最終製品の品質を担保する上で大きな課題となります。
一般的なギヤポンプや高速回転する遠心ポンプは、構造的に強いせん断や撹拌作用を生み出す可能性があります。これによって結果的に繊維が寸断・破壊されてしまうことにつながります。その結果、後工程で複合材の強度が上がらないといった品質に関する不具合や、移送前後で液粘度が変化してしまうなど移送におけるトラブルが発生します。
素材本来の機能を維持するためには、優しく移送する低せん断ポンプへの切り替えが効果的です。
繊維質を含む液体移送で発生する課題の対策方法
繊維質を含む液体の移送トラブルには、硬い繊維が詰まってポンプが止まる、せん断で繊維が切れて品質が落ちる、移送中に固液分離するなどといった課題が見られます。これらを回避するには、設備の配管状況やその付帯設備に加え、ポンプの構造選定や移送プロセス全体の見直しによる対策が必要となります。
まず、安定稼働のポイントとなるのが、移送中に繊維を詰まらせにくい構造のポンプの選定です。弁や狭い流路を持たず、回転部が非接触のポンプを採用することで、繊維による詰まりのリスクを大きく軽減することができます。
同時に、品質面においては低せん断、低撹拌の移送方式も効果的です。強い撹拌やせん断を伴わない容積式ポンプを使用すると、デリケートな長繊維の破断や移送中の固液分離を抑制し、素材本来の形状を維持したまま次工程へ送ることが可能です。
また、繊維スラリー特有の急激な粘度変化や負荷変動に負けず、定量を供給できる定量性も重要です。加えて、ポンプ単体だけではなく、繊維が沈降・滞留しない配管レイアウトや稼働方法の最適化を行う必要があります。
「構造」「機能」「環境」を総合的に見直すことで、頻繁なメンテナンスや突発停止を大幅に低減し、生産性と品質を両立した安定した製造ラインを実現できます。
繊維質を含む液体移送でおすすめのポンプ
二軸スクリューポンプ
上記のような課題を解決するために効果的なのが二軸スクリューポンプです。このポンプは以下の特長により、繊維質のものを含む液体に対しても優れた移送性能を発揮します。
絡まり・詰まりを起こしにくい移送原理
二軸スクリューポンプは、2本のスクリューが非接触で回転しながら流体を連続的に押し出す構造です。スクリューの間に繊維状異物が入り込んでも、回転体に絡まることなくそのまま前に押し出し続ける事ができます。
また、狭窄部に繊維が入り込む可能性については、ポンプの構造に工夫をすることで対応することができます。
液に優しい移送
二軸スクリューポンプによる移送は、前述の通り連続的に液を前に押し出すような形式で行われるため、液にせん断が加わることはほとんどありません。これにより、柔らかい繊維状のものでも傷つけずに移送することができます。
高粘度液の対応
CNTやCMFの懸濁液は液粘度が高くなることが見られますが、二軸スクリューポンプはその移送原理上、高粘度の液体でも取り扱うことが可能です。
導入事例
セルロース
ある化学工場では、セルロース繊維を含む原料を手作業で乳化機へ投入していました。重労働解消のためポンプを使った投入への変更を試みましたが、一般的なポンプでは繊維が内部で詰まるか、送液できたとしても脈動により供給量が安定せず、乳化品質にバラつきが生じることが課題となっていました。
そこで「二軸スクリューポンプ SQ型」を導入。繊維に合わせてポンプをカスタマイズすることにより、繊維詰まりによる停止をゼロに。さらに脈動のない連続定量移送が可能になったことで、乳化機への供給が安定し、均一な品質確保と完全自動化に成功しました。
パルプ原料
ある製紙工場ではパルプ繊維を含む原料の移送に接触式の回転ポンプを使用していました。しかし、回転部分がケースと触れ合う構造上、金属粉などのコンタミが液中に混入し、製品品質に影響するリスクを抱えていました。加えて、ポンプ内で繊維の絡まりが発生しやすいため、メンテナンスとして頻繁な分解洗浄が必要であり、現場の大きな負担となっていました。
そこで、回転部分とケースが接触しない「二軸スクリューポンプ SQ型」を導入。金属コンタミの発生リスクが大幅に低減したことで品質についての懸念もクリアになり、同時に稼働中の絡まり発生を解消してメンテナンスの負担軽減を実現しました。
植物繊維
植物繊維を含むスラリー性のある液の移送シーンで、既設ポンプでは内部での詰まりが原因で突発停止が頻発し、そのたびに配管内の液回収、ポンプ分解、洗浄、再組み立てという復旧作業の手間が発生し、現場の疲弊の原因となっていました。
この工程に二軸スクリューポンプを導入。その移送原理により回転部に繊維が絡まるようなことが見られず、さらに繊維サイズに合わせて内部部品をカスタマイズすることで、絡まりリスクを大幅に減らしました。結果、ポンプの緊急停止が極めて少なくなり、安定稼働とメンテナンスフリー化を同時に達成できました。
ポンプ選定時のチェックリスト
導入にあたり、以下のような項目を事前に確認しておくことが推奨されます。
- 液体の粘度、流量、温度はどれくらいか
- 移送距離や配管の太さはどれくらいか
- 含まれる繊維の濃度はどれくらいか
- 含まれる繊維の凝集性はどれくらいか
現場によっては他の設備(解砕機や乳化機など)との連動性も考慮する必要があるため、現場の課題に即したカスタマイズが可能なポンプであるかという点も必要になります。
伏虎金属工業の技術サポート
繊維質を含む液体の移送は、単に固形物を送るだけでなく、「絡まる」「詰まる」「変質する」といった様々なリスクを伴う非常に難易度の高い工程です。伏虎金属工業は、これらのトラブルを現場の努力や頻繁な清掃でカバーするのではなく、技術的なアプローチで解決するパートナーとして支援します。
まずは液の詳細や配管状況のヒアリングを通じ、扱われる繊維の種類、長さ、濃度、そして液体の粘度特性を把握します。それにより、現場で頻発する閉塞や変質の原因が、ポンプの構造的特徴だけにあるのか、それ以外の要素にも依存しているのかを検討します。
その上で、繊維が詰まりにくいポンプ仕様の選定や、素材を傷めずに運ぶための提案をはじめ、ポンプ内での繊維の沈降や投入時の液のブリッジを防ぐための手段までトータルでの最適化を図ります。
導入前には実液テストで詰まらせたり変質させたりしないかを検証して、安定的に稼働できるかをご確認いただけます。製紙・化学・環境プラントなど、多様な現場で培ったノウハウで、生産の効率化に寄与いたします。
まとめ
繊維状のものを含む流体は、ポンプ選定を誤ると生産停止や品質トラブルのリスクが非常に高くなります。二軸スクリューポンプであれば、こうしたリスクを最小限に抑えつつ、やさしく液体を移送できます。
「繊維が詰まって困っている」「今のポンプがすぐ止まる」という現場では、ぜひ二軸スクリューポンプの導入をご検討ください。
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