化粧品や食品で扱うクリームやジェルはポンプで移送するには厄介な液体で、泡立ちや成分分離の回避、移送中に液質変化しないようにするなどといった特有の課題に気を配る必要があります。これらはどれも製品の仕上がりや生産効率に直結するため、現場では大きな悩みの種となります。
本記事では、このデリケートなジェル特有の問題を安定的に移送するためにどのようなポンプ選定が必要なのかをご紹介いたします。
ジェル移送の難しい課題とは?
ジェルやクリームの移送では、水のようなサラサラとした液体とは全く異なるアプローチが必要です。現場を悩ませる最大の壁は、その高い粘度と液質の変化しやすさ、移送後の洗浄性にあります。
一般的にこのような液体は流動性が低いため、ポンプでの吸い込み不良を起こしやすく、始動時の立ち上がりが遅れたり、期待通りの流量が出ないことがあります。加えて、液体が中に供給されていない状態でポンプを運転する状況になり故障に繋がる可能性もあります。
さらに、特有の伸びや粘りによって配管内壁に残液が強固に付着して目詰まりを招きかねない他、移送後の配管やポンプ内の清掃も困難になりがちです。
また、ジェルは移送中に気泡を抱き込むことがあり、これによる脈動が発生すると充填ラインなどでの安定供給が困難になります。さらに厄介なのは、ポンプ内部の回転などで液にせん断が加わることで成分の分離やゲル構造の破壊、意図しない泡立ちが発生し、製品としての価値を損なってしまうリスクがあることです。
ジェルを安定して移送するために必要なポンプの要件とは?
高粘度ジェルでも吸い込みやすい“強力な自吸性能”があるか
高粘度のジェルは流動性が極めて低く、ポンプの吸入口まで液体を導くだけでも大きな抵抗が発生します。これを回避するために吸入側の配管を太く短くすることがまず大前提となりますが、それに加えて自吸力が不足しているポンプでは、いつまでも液が上がってこないために毎回の呼び水が必要になったり、液切れによる空運転のリスクがつきまとったりします。
こういったことを回避しつつジェル移送を成功させるためには、強力な自吸力を持つ容積式ポンプを選ぶ必要があります。ポンプ内部で強い真空圧を生み出せる構造であれば、重いジェルでも引き込むことができるようになります。この特性により、空気混入時(エア噛み)でも吸引が途切れにくい安定した運転を実現します。さらに、その高い吸引力によって容器内の残液も強力に吸い上げられるため、原料ロスを最小限に抑え、生産コストの削減にも貢献します。
洗浄しやすく、分解も簡単で衛生状態を保ちやすいか
高粘度で付着性の高いジェルやクリームの移送において、ポンプ内部での滞留は品質リスクに直結します。擬塑性やチキソトロピー性を持つ流体は、流れが生まれにくい部分に蓄積しやすく、これが目詰まりやバイオフィルム形成の原因となるためです。
これを防ぐためにポンプに要求されることとして、継ぎ目やポケットになる部分が少ない構造であることや、簡単に分解洗浄できるサニタリー構造であることなどが挙げられます。特にポケットになる部分が少ない構造であることは、歩留まり改善や、液の蓄積による予期しないポンプの緊急停止を回避するためにも必要な考え方となります。
また、内部に液溜まりのない設計であれば、CIP(定置洗浄)においても洗浄性が向上し、頻繁な製品切り替えや洗浄作業がスムーズになります。これはコンタミネーションの防止や衛生面の確保という点でも重要になります。
移送中の液質変化を抑制できるか
デリケートな化粧品クリームや医薬用ジェルにとって、移送中に液の品質(液質)が変化しないことは重要な課題です。ジェルの粘度は、わずかな温度変化やバッチごとの配合差、製造後にどれくらいの時間が経っているかによって容易に変動するため、吐出流量が乱れやすくなります。このため、幅広い粘度の液の移送に対応できるポンプを使用の上、インバータ制御を活用することで、それぞれの状態に合わせた最適な回転数で運転し、安定した流量で供給を続けることができます。
また、品質を維持するためにポンプ内で液に過度なせん断力や撹拌を加えない移送原理が求められます。せん断ストレスは、ジェルの成分分離や泡立ち、粘度変化を引き起こす最大の原因となるためです。このため、容積式ポンプの中でも、特に低せん断で液を送る構造を持つものが理想的です。これにより、最終製品の品質の一貫性を確保し、不良品の発生を抑制します。
ジェルを安定移送するためのおすすめポンプ
二軸スクリューポンプ
特徴
2つのスクリューによって生み出される空間を連続的に押し出すことにより移送を実現する容積式ポンプ。2つのスクリューはお互いに触れ合っていない他、それらを覆うケーシングにも触れていないため、回転によるポンプ由来の異物が生じにくい。低速から高速運転にも対応可能。
得られる効果
- 液を連続的に押し出すような原理のため、液にせん断や撹拌を加えずに移送
- 高粘度液移送でもポンプに負担が加わりにくい構造のため、幅広い液の移送に対応
- 非接触式のポンプであり、ポンプ由来のゴムや金属片のコンタミが発生しない
- 分解洗浄が容易であり、COPが必要な場面でも作業時間を短縮
- 回転数を変えることにより、ポンプ1台で化粧品の移送からCIP洗浄まで対応可能
脱泡機能付き二軸スクリューポンプ
特徴
二軸スクリューポンプの特徴を継承しつつ、移送しながら液の中に含まれる気泡を除去できる機能を有したポンプ。こちらの機能に目が向けられがちではあるが、非接触式のポンプでありながら高い自吸力を有する、完全ドライ状態から運転開始が可能という特徴も有しており、高粘度の移送に強い。
得られる効果
- 泡を除去することで充填精度を高めたり製品の酸化防止に貢献
- 真空タンクでの脱泡が必要だった工程の設備と時間を大幅に省略可能に
- 二軸スクリューポンプが有する効果をそのまま継承
導入事例
医薬用ゼリー
高粘度なゼリーの製造ラインでは、従来のポンプでの洗浄が困難で、分解洗浄による時間と労力が大きな負担でした。この工程に二軸スクリューポンプを導入した結果、ゼリー(高粘度液)の移送と、水(低粘度液)の高速移送によるCIP洗浄(定置洗浄)を1台のポンプで完結することができました。これにより、シンプルな配管構成で洗浄品質が安定し、洗浄水・廃水も削減。結果として年間約700万円の改善効果を実現し、生産性の向上に成功しました。
ジェル移送にまつわるポンプ選定時の失敗例
【事例】高粘度ジェルが吸い上がらず、ポンプが空運転してしまった
高粘度な化粧クリームをポンプで充填機に移送する工程を新設する際、ポンプ由来の異物が発生するリスクの高い接触式ポンプの導入は避け、非接触式ポンプでの対応を考えていました。
しかしながら、非接触式ポンプは構造上自吸力が弱いタイプではなかなか流動性の低いクリームを吸い込み切ることができず、ラインの立ち上がりが極端に遅れたり、場合によっては液切れによる空運転が発生して、ポンプの損傷やライン停止につながるリスクがありました。
この課題を解決するためには、ポンプ由来の異物発生リスクを受け入れながらストレーナーや磁石などを利用して極力異物を取り除けるようにする、非接触式の容積式ポンプの中でも特に高い真空圧を発生できるポンプに切り替えるといったことが手段となります。
【事例】移送中に液質が変化してしまった
クレンジングジェルをコンテナから容器にポンプで移し替える工程を設けるにあたり、ポンプを探していました。しかしながら、一般的なギヤポンプを使用すると移送中に液にせん断が加わってしまうためか、移送前後で液の品質が大きく変化してしまうことがわかりました。
これが発生すると容器に移し替える量が変動してしまったり、移送前の状態に戻るまで短くない待ち時間が発生してしまったりと、課題がいくつか発生してしまいました。
この課題を解決するためには、極力液体が狭い流路を通らないようにする、液体をしごくような送り方をしないなど、移送中にせん断を加えないような移送方式を持つポンプを選定することが手段となります。
伏虎金属工業の技術サポート
高粘度でデリケートなジェルの移送は、単に高性能なポンプを導入するだけでは成功しません。流体の特性と現場の条件を深く理解した上での技術サポートを伴うことでミスマッチを減らすことができます。
伏虎金属工業では、お客様の抱えるジェル移送の課題を解決するため、ポンプの選定から導入までのご支援を提供します。
事前ヒアリングと最適選定
お客様の取り扱う液体の性質をヒアリングし、その上で製品ラインナップと、化粧品、食品、化学分野での移送実績(化粧クリーム、医薬用ゼリー、樹脂溶液など)に基づき、低せん断・高自吸力といった要件を満たすポンプ仕様と移送方式をご提案します。
実液による検証と確実な条件確立
ご要望に応じて現場テストを実施し、実液を用いて吸込力、吐出量、回転数(インバータ制御)などの運転パラメータを調整します。これにより、お客様の製造現場での導入がスムーズになります。
洗浄面までを意識
特にサニタリー性が求められる現場において、分解洗浄のしやすさやCIPによる簡易洗浄の可能性についても踏まえてポンプの選定を検討いたします。
まとめ
ここまで、高粘度ジェル特有の「吸込不良」「せん断による品質劣化」「洗浄性」といった課題と、これらを解決するポンプの要件(強力な自吸性能、低せん断性、CIP対応)を解説しました。
ジェルやクリームの種類や生産プロセスによって最適なポンプは異なります。伏虎金属工業は、豊富な導入実績と専門知識に基づき、生産効率を最大化する貴社だけの最適解をご提案します。まずは、現在の課題についてお気軽にご相談ください。
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