はじめに:化粧品の移送に求められることWhat is needed for cosmetics transfer
化粧品の製造現場では、ローションのような低粘度液から乳液といった中程度の粘度のもの、保湿クリームのような高粘度製品まで、非常に多様な流体を取り扱います。さらに、気泡の混入・乳化状態の保持・異物混入・洗浄性といった衛生・品質面にも常に注意を払う必要があります。
そのため、ポンプ選定には「ただ次の工程まで送れればいい」という視点では不十分であり、製品特性に応じた流体制御と、衛生・メンテナンス性までを含めたトータルでの管理が求められます。
本記事では、化粧品製造現場で直面する搬送課題と、それに対応するポンプ構造・選定ポイントについて解説します。
化粧品移送における課題とはChallenges in cosmetic transfer
化粧品製造工程における液移送のシーンでは、以下のような複数の要素が関係してきます。
●製品による物性の差
製品例 | 粘度 | 主な課題 |
---|---|---|
化粧水 | 低粘度(数100mPa・s) | 泡立ち |
リキッドファンデーション | 中粘度(数100~数1,000mPa・s) | 泡立ち、せん断や撹拌による変質、洗浄性 |
乳液・保湿クリーム | 高粘度(数1,000~数10,000mPa・s) | ポンプへの負荷、せん断や撹拌による変質、洗浄性 |
●移送における課題の詳細
- 気泡混入:充填量のバラつきや製品の品質に影響
- せん断や撹拌による変質:乳化状態や製品の品質保持期間、外観などに影響
- 洗浄性:製品切替時の色移りや衛生面、分解洗浄のしやすさなどの考慮が必要
- 同一設備での複数品目生産:設備の汎用性(移送に使うポンプの粘度や温度の対応幅)、段取り替えに必要な時間の考慮が必要
化粧品移送に適したポンプRecommendation
以下の2つのタイプが化粧品移送に特に適しています。
1.二軸スクリューポンプ
■ 特徴:
脈動やせん断、撹拌を抑えて移送できるサニタリーポンプ
■ 得られる効果:
○ 移送中に液を撹拌しないため、泡立ちやすい液体でも泡立てずに次工程へ供給
○ せん断を加えない移送原理のため、O/WやW/Oの乳化状態やラメラ構造の破壊を抑制して次工程へ液を供給
○ CIP洗浄にも対応でき、分解洗浄にも簡単に対応できる構造であるため、洗浄工程の効率化を達成
2.脱泡機能付き二軸スクリューポンプ
■ 特徴:
移送しながら液中の気泡を除去したり、ポンプ由来の異物発生が起こらない構造のサニタリーポンプで高粘度の液体を吸入できる強い吸引力を発揮
■ 得られる効果:
○ 真空タンクでの脱泡が必要だった工程の設備と時間を大幅に省略可能に
○ 充填機への液供給用として使用することで、充填量のバラつきや気泡の影響による充填時の液の飛散を抑制
○ 粘度が高く、人手や接触式のポンプを使うことでしか移送できなかった液体の移送工程の衛生面を向上
導入事例Case study
まとめSummary
化粧品製造では、「形状を維持して送る」「汚れを出さない」「製造品目切り替え時の作業負担を少なくする」ことが、品質と生産性の両立に直結します。そのためには、製品の粘度・泡立ち・衛生要件に合わせて、最適なポンプ構造を選ぶことが欠かせません。
二軸スクリューポンプは多品種・高品質志向の化粧品製造において信頼できる選択肢となっています。
導入前には、実液での移送テストやライン構成との整合性確認を行い、安心・安全・効率的な製造工程を築きましょう。
ご紹介した製品Recommendation

二軸スクリューポンプSQ型
高粘度液の移送に強い

脱泡機能付き二軸スクリューポンプVQ型
流動性の低い液体を非接触式のポンプで自吸